日本IBMの持ち株会社である「IBM APホールディングス」は、東京国税局の税務調査で自社株売買取引の否認を受け、約4000億円の申告漏れを指摘されていました。追徴税額なんと約1197億円もの巨額追徴事案です。法人側はこの課税の取り消しを求めて訴訟を起こしていました。1審、2審とも国に全額の処分取り消しを命じており、今回最高裁で国の上告を退けたことから国の敗訴が確定したものです。
取り消しにより既に納められた本税を法人側に返すことは当たり前の話なのですが、問題となるのは「還付加算金」です。還付加算金とは、納め過ぎた税金に利子相当額を加算するものです。現在の利率は2%ほどとなっています。国税敗訴により法人側に支払われる還付加算金は100億円を超える見込みです。これは、全額国民が負担します。つまり国民から徴収した税金の中から支払われることとなります。
無駄な税金を使わないでいいように、当局側にはより慎重な課税が求められ、法人側にも直ちに違法とは言えないまでも、そのスキームにより多額の課税が回避できているなどの紛らわしい取引、行き過ぎた節税などは慎むべきものなのかもしれません。適法か違法か判断が難しいグレーゾーン取引に対する否認に果敢に取り組んだ当局側の姿勢、やる気はとても素晴らしいものだと思います。しかし、この巨額敗訴の教訓は、今まで以上に調査法人の取引の実態を確実に把握したうえでの適正で公平な課税に真摯に取り組まなければならないということだと思います。
過去の巨額の課税取り消し処分は、旧日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)の法人税約1480億円、武富士元会長の長男の贈与税約1330億円があります。
出典:20160220読売新聞朝刊記事から一部引用しています。
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