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法人会会報誌へ寄稿

  • 執筆者の写真: oda
    oda
  • 2017年7月12日
  • 読了時間: 3分

あなたの会社の「代表者貸付金」と「代表者借入金」! 税務署はこう見ています!?

新事務年度がスタートしたこの時期、某税務署では今年度の法人税実地調査を予定しているA社及びB社について、過去の申告状況及び決算書数値を丹念に分析しています。担当統括官は、A、B社ともに、法人と代表者との多額の金銭貸借取引に着目した様子です。期待の若手調査官を呼び、早速、調査の実施を指令しました。

統括官「A社の代表者貸付金が毎期増加傾向にあるが、調査のポイントは何かな?」

調査官「はい、役員報酬を低く設定しすぎたことから生活費が足りず一時的な役員報酬の代わりとして代表者貸付金勘定を使い生活費を捻出にしているか。あるいは、領収証を出せないような不正支出を一時的に貸付金としたもの。また、赤字を回避するために正当な経費を貸付金に振り返るなどの事例も想定できます。受取利息の計上の確認も含め、返済実績もなければその実態は「役員賞与」だと認定することも前提に調査します。」

統括官「B社は好況の割に代表者借入金が全く減る気配がない。調査してみるか」

調査官「はい、代表者借入金は資金源がポイントですね。明確な資金源がない場合は、税金を減らす目的で(現金)/(売上)と仕訳すべきところを、(現金)/(代表者借入金)として売上を抜いていたり、でたらめの経費をでっち上げて出金した裏金を代表者借入金勘定により再び会社に還流させたりしていることも想定できます。いずれにしても、代表者貸借勘定は「どんぶり勘定」に起因することが多いですので、帳簿実態を確認する観点からも調査を実施したいと考えます。」

 怖いですね~。法人税確定申告書に添付して提出された決算書上に、会社と代表者との資金貸借があるだけで、税務署の調査担当者はこれだけの想定をしているのです(字数が許せば、その想定ポイントは限りないものとなるでしょう。しかし紙面の都合上代表的なものを上げました)。

会社と代表者との金銭貸借は基本的には1年以内の短期勘定が理想(決算書に表れないように)ですが、会社の諸事情により長期勘定となっていることも多いのが事実です。性悪説に立つ税務署の調査担当者の想定は自由ですが(それがお仕事)、まじめに日々記帳・申告している多くの会社にとってはあまり気持ちのいいものではありませんよね。

他方、代表者貸借勘定は、金融機関からの印象も良くないようです。代表者貸付金については、運転資金として会社に融資したお金がその目的を逸脱して代表者に流れている(個人を通した別会社への迂回融資の疑念等)などの印象により会社評価が下がりがちとなるでしょう。また、代表者借入金については、自己資本比率(自己資本/総資本)の低下が融資上のネックとなるでしょう。

 会社と代表者との貸付金、借入金等金銭貸借を解消する対策としては、代表者貸付金の場合、2~3年のスケジューリングにより給与を増額し(社保、所得税の負担は増しますが)返済に充てていきます。間違っても債権放棄などしたらNGです。法人税だけでなく所得税も負担することになるでしょう。また、代表者借入金については、①給与を減額してその分を返済に充てる。②繰越欠損金があれば、債務免除する(債務免除による課税を繰越欠損金で相殺する)。また、③DES(デット・エクイティ・スワップ)により借入金を株式に変換するなど、3つの方法が代表的解決策です。代表者借入金は相続税の計算上、額面金額で相続財産として評価される一方で、DESにより株式化した場合の株式の相続税評価は、その時点における会社の価値で評価することになり、相続税の節税対策につながることもポイントですね。

決算間近の会社は、決算書上の代表者貸借科目を再度確認してみてもいいかもしれませんね。


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